エッセイ

神さまがくれた時間-5

5.Show Me Please!


ジャズは誰に習ったんですか?って聞かれることがありますが、最初は独学なんです。というのも、おけいこごとでピアノは習ってはいたものの、コードをぜんぜん知らなかったので。初めてのコードは大学のビッグバンドに入ってから、Cはドミソというのを先輩に教えてもらったんです。それが面白くて、楽譜を買い込んで、片っ端からどんどん弾いてみたわけです。そうすると、CにはCmとかC-とかC7とかC△なんかもある。とにかく先輩に「これなんですか?」って聞いて、大体のコードの決まりがわかるようになりました。なん百曲もある楽譜を片っ端からだから、わからないところは無視しながら、とにかく弾きまくりました。1日6時間は弾いてたかな。面白いから、時間がたつのを忘れちゃう。それで半年後には、歌を歌いながらコードをどうにか弾けるようになってきました。
そんな時にたまたま、弾き語りのお仕事をいただいたんです。よくやったもんですね、無鉄砲っていうんでしょうか。でも次々とお仕事が入ってきて、まあ、歌が中心だったんで、ピアノはなんとなく伴奏できていれば、良かったわけです。
でもイントロや、エンディングやそれに間奏も入れなくちゃいけないから、だんだん工夫もして、なんとなくアドリブやメロディフェイクもできるようになっていったって感じでしょうか。

歌うのが怖くなってからは、断腸の想いで音楽を辞めました。ドラム缶に楽譜を入れて燃やしました。でも音楽への想いは断ち切れなくて、ある人の誘いでまた音楽の世界に戻りました。もう、歌は歌えませんから、ピアニストとしてやらせてくださいというお願いをしました。
さあ、ピアニストとしてちゃんと勉強をしなくちゃ。それから、ジャズを教えてくれる先生を探して、たくさんの先生に習いました。

この「Show Me Please!」はそんな中で生まれた曲です。「どうしたらいいの、教えて!」の気持ちで作った曲です。

そんな私もたくさんのすばらしい指導者に恵まれて、今では自分が教えるという立場になりました。

「教える」って、「習う」と同じですよね。鏡のあちらとこちらというだけの違い。だから、私はいつまでも学びは続けたいと思っています。そうしないと、教わる立場がわからないないでしょ?そして教えてもらえる人はなるべく苦労した人がいいと思っています。天才的な人って、最初からできちゃう人たちがいるんですよね。だから、あまり工夫がなくてもできちゃう。苦労した人はいろいろ工夫もするし、学びもするので、引出しが多いです。

そして教えるって、「愛」だと思うの。
惜しみなく自分の知識と経験を、生徒に捧げちゃうんです。

私の最期の恩師でもある稲森康利先生は、そんな人でした。私が指導を受けた故・和泉宏隆氏やラーシュ・ヤンソンも彼を尊敬していました。
生涯に120冊以上のジャズ理論書とアレンジ集を出版しました。国際ジャズ教育者協会(IAJE)の日本支部長を勤め、アドバイザーカウンシルもされてました。また、山野ビッグバンドコンテストの審査員も10年間勤めてらっしゃいました。
病気で亡くなるまで、音楽のお話ばかりで、一度もネガティブな言葉を先生の口からきいたことがありませんでした。
http://inamorimethod.net/service.htm

自分もそんな人になりたいと思います。
いつも自分が目指せる人がいるというのは、幸せなことです。

さて、この曲もトリオ演奏で、この曲については、アドリブはその時の即興です。いくつかの曲は事前にアドリブを組み立てておきましたが、これについては、何も考えずに演奏しました。このイントロのトリッキーなリズムがちょっとお気に入りです。

※Show Me Please!の試聴はこちらから。
https://music.apple.com/jp/album/show-me-please/301376834?i=301376840

アルバム購入はこちらから。
https://www.amazon.co.jp/dp/B001MSU7WK/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_T7CJ23MRMXXB42W4M7RJ

From left: Yoshi Waki, Me, Quincy Davis

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