エッセイ

神さまがくれた時間-3

3.Some Forgotten Things


この曲は子どものころに見えていた景色や匂いやあの感覚を、取り戻したいという想いで書きました。白い雲が大きなクジラに見えたり、月って夜しか出ないって嘘だよねとか、れんげで作った冠のこととか、林に迷い込んで知らないところに出て泣きそうになったり…みなさん、それぞれの思い出があると思います。大人になるとそんな感覚はそぎ落としてしまうけど、あれってとっても大事な感覚だったんじゃないかなって思うことがあります。

私の小さい頃の夢は、ほったて小屋に住んでるんです。でもそのほったて小屋、実は地下に入るとお城になっていて、たくさんの人が働いていてます。そして私はどうもそこのお姫様で、長い廊下を歩くと、みんなが挨拶してくれます。ほったて小屋から町に出ると、そこでもみんなが挨拶してくれます。みんながお友達なんです。そんな夢、よく見て ました。

でも夢って、毎日のように変わっちゃうし、なかなか実現しないですよね。そんな時にディズニーの「ピノキオ」を見ました。星の女神が出てきて、ピノキオの夢を叶えてくれる。あの星に願えばいいのねって思って、家に帰って、それらしい星を見つけました。「あなたは私の星のお友達。だから願いを聞いてね」って星を見ながら寝ました。でも翌日、どの星だかわからなくなって、私の夢は永遠に叶うことがなくなっちゃいました。

てな、感覚、大人になったら、「なに、バカなこと言ってるの」って怒られそうですね。だけど、そんな感覚って大切だと思うんです。

小学校からの友達とは、今でも毎日のように、やり取りしています。もう半世紀以上のつきあいですが、いつも刺激的です。いまだにイベントを企画すると、クラスの4分の1以上の同級生が集まります。みんな高齢者になってきたけど、元気です。こんなところ行ったとか、こんなもの食べたとか、家族や病気のこともいろいろな相談もするし、いい友達関係です。小学校のままだから、色気もなくて、何せ楽な家族みたいな関係です。
小学校のころのことはすっかり忘れているけど、外付けメモリーが回りにいるので、いろいろな情報が集まって、面白いです。

さて、この曲、レコーディングはトリオで演奏しています。管楽器やストリングの入る曲については、「花だより」以外は、百々徹さんがアレンジしてくれました。ただし、トリオはその場で一発撮りです。ちょっとだけ、行き方をアレンジしたものはあるけど、3曲のトリオ演奏(Some Forgotten Things、Show Me Please!、Breaking The Waves)は2テイクか3テイクで収録しました。

ベースは脇義典さん、あちらではYoshiって呼ばれてます。彼はグラミーノミネートのアルバムにも参加していて、クラシックからジャズまでなんでも来いのプレイヤーです。ベーシストを探すときに、ベーシストだけは日本人にしてくださいって、百々さんにお願いしました。何せ、ベーシストはいちばんの支えなので、私の意図をちゃんと理解してくれる人がよかったんです。脇さんの支えはとっても頼りになりました。このレコーディング後は、今からモントルージャズで出演するって言ってましたね。

ドラムはQuincy Davis(クインシー・ディヴィス)。最近はセイコーのジャズワークショップなどでもおなじみになっているようですが、かなりの親日家です。Quincyにもいろいろと注文をつけましたが、すぐに素直に対応してくれました。ここはオーケストラのティンパニーみたいな音を出してほしいとか…です。とにかく心根が優しくって、人懐っこい人です。

リハーサルからこのベースとドラムでばっちりだったので、レコーディングには不安はなく、とにかく愉しみだったんです。ふたりとも、東京ブルーノートなどにもよく来ているようです。

さて、Some Forgotten Thingsでは途中、ソロになってちょっとクラシックぽいリズムになる部分があります。実はここをちょっと古めかしいラジオからの音に編集したかったんですが、マスタリングの内藤さんとディレクターでもある百々さんに反対されました。でものちのち、内藤さんのエンジニアで百々さんのアルバムでそんな編集が加えられていたのを聞いて、あれれ??って思いましが、やっとやりたい気持ちわかってもらえたのかなぁって…

この演奏、自分でもどうやっているかわからないんですが、あるピアニストに、これどうやって弾いてるの?って聞かれたことがあります。指がクルっと回ってる部分です。あまり意識もなくやってたんですが、自分なりのスタイルなんだなって、人に指摘されてわかりました。そういう意味でもこの曲は弾いていても楽しい曲です。

Yoshi Waki

Quincy Davis

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