エッセイ

神さまがくれた時間-2

2.Azul! Azul!

アルバム「Time He Gave Me ~神さまがくれた時間」の1曲目は、鳥のさえずりから入るAzul! Azul!。実はこの鳥のさえずりは、トランペット奏者のマイケル・ロドリゲスの口笛です。彼がレコーディングを終え、リュックを背に帰ろうとしている時に、この口笛を吹いてました。「ちょっと、待った!」とむんずとリュックを引っ張って、「その口笛を録音させて!」とお願いして、録音が叶ったものです。実は以前から鳥のさえずりや海の音をどうにか録音したいと思いながらも、機材も技術もなく、諦めていたところでした。マイケルの初の口笛録音に、スタジオエンジニアのジム・クラウスが海の音を入れ、そしてパーカッションのKahlil Kwame Belle(未だに読み方がよくわからん!)のパーカッションを入れて、あっという間に完成。そんな効果音がアルバムの導入になっています。

さて、Azulとはポルトガル語で「青」を意味しますが、それから派生して海や空の青のことも言います。そんな晴れ晴れとした気持ちで作りました。当初はツーファイヴ(Ⅱm7-Ⅴ7)という、基本的なコード進行の練習のために作った、なんでもない曲でした。でも何度も何度も演奏しているうちに、曲自体にパワーをやどすようになったんです。不思議ですね。メロディやコード進行を変えたわけじゃないのに、曲自体が踊りだすんです。

この曲にはブラジルへの郷愁も込めました。ブラジル音楽が大好きになっちゃった私は、始まったばかりのJ-Wave”サウジ・サウダージ”というブラジル音楽を中心に聞かせてくれる番組に毎週ハガキを出して、プレイリストを送ってもらっていたほどです。

そんなころ、友人から紹介された鍼灸学校の実習コースに通っていました。この学校はすでに鍼灸院をやっている鍼灸師さんたちが、さらに腕を磨き知識と技術を学ぶために、通う学校です。卒業前には担当する患者さんたちを相手に、鍼灸のさらなる腕を磨くという実習コースです。おかげで当時は1時間500円で最高級の診察施術を受けることができました。約数か月担当医は決まっています。

 

ある日新しい担当医が「池田さんはどんな音楽がお好きなんですか」と何気ない話を始めました。「ブラジル音楽です!」「僕、ブラジルから来たんです」とお互いびっくり。ブラジルの国費でまだあまりブラジルでは広まっていない、鍼灸の技術を学ぶように、サンパウロから派遣された日系三世の方でした。そこから話は急展開し、ODさんには「クルベ・ド・ブラジル」というブラジル人の集まるクラブを教えてもらいました。そしてブラジル武術「カポエラ」の教室があるというので、一緒に連れて行ってもらいました。
「カポエラ」はブラジルに渡った奴隷たちが手を鎖で繋がれていることから、踊っているとみせかけて足で相手を攻撃するという、武術です。側転も逆立ちもできない私は36歳になって逆立ちを練習しました。でもなんとも「犬のおしっこ」状態の側転ぐらいしかできませんでしたが…


彼の友人でカポエラの指導者、マイヤーさんがやってきました。髪は腰まであり、三つ編みをしていて、まるでブラジル版キリストという、容貌の人でした。彼の講義で「すべては螺旋である」という話を聞き、目からうろこでした。DNAも螺旋ですね。螺旋はパワーを逃さず、無限に続くことができる。私は音楽のリズムも螺旋だと思っています。

ODさんには歌詞の意味も教えてもらいました。そしてこんなに人の話をちゃんと聞いてくれる人がいるんだなと、ずいぶん救われました。彼が帰国する時には、飛行機の音をきくだけで、涙が出そうになりました。そんな恋の物語もありました。

Azul! Azul!はそれから数年たってからの作曲です。ここにもちょっとした恋物語が隠れていたりするんです。
レコーディングでは最初にこの曲をみんなで演奏しました。あっという間にミュージシャンたちの心がひとつになって、みんなが楽しんでいるのがわかりました。そしてレコーディングはスムーズに進んでいったのです。

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