エッセイ

神さまにはプランがある~続編-13

13. レコーディング本番

BrooklynにあるPark West StudioはオーナーエンジニアのJim Clouseの自宅の地下を改造してつくられたスタジオ。百々さんが家まで車で迎えに来てくれて、一緒にスタジオに向かう。赤いドアを開けるとJimが笑顔で迎えてくれた。ロビーの奥にはミキシングルーム。スタジオに入ると左右に5つのブースが並んでいる。右側にはドラムブースとピアノブース、左にはベースやギター、そして管楽器などのブース。ピアノがKAWAIということで、最初どうかなって思ったが、このミニグランドはいい響きをしている。聞くところによると日本のKAWAIとは違い、シュタインウェイと同じ工場で作っているらしい。試し弾きしているとJImがやってきて、”Beautiful!”って言ってくれた。その言葉で緊張が解き放たれた。

 レコーディング1日目はホーンセクションとギター、それにリズムセクションの収録。ギターのPaul Meyersの到着を待って、始めると、もうそこは音楽だけの世界。ああ、なんて楽しいんだろう!

 1曲め”Azul! Azul!”は3テイクで完了。次の曲”Verde”も2テイクで完了。ギターのPaulはこれでお仕事終了。「いやぁ、楽しいレコーディングだったよ。日本にはBlue Noteにも行くから、また逢おうね!今度はBlue Noteで一緒にやろう!」
 ”Givgin Recieving”のホーンセクションのみのテイクは1テイクで完了。特にフリューゲルのMichael Rodriguezは、自分でもびっくりするくらいにロングトーンが伸びて、1分くらいはノーブレスで吹いていた。Jimも「こんなの見たことがない」って驚いていた。
 ドラムのQuincy Davisは仕事でおとといから一睡もせずのレコーディングだったが、そこはプロ。”Hanadayori”は「和太鼓みたいな音出してほしいの」ってお願いすると、工夫して「こんなのはどうかな?」ってサウンドを作り出してくれた。
 Irwin Hallは持ち変える楽器が多くて、最後まで録音に付き合ってくれた。
 そしてひとりひとりのショットは「カメラマンお願いします」と百々さんにお願いした。立ってるものはなんでも使っちゃう、ちゃっかりもののワタシ。

 昨日も書いたが、Michael Rodriguezが帰りがけに口笛で鳥の音を真似ている。リュックを背負って帰ろうとしているところを「ちょっと待った!その口笛を録音させて」って録音したのが、アルバムの最初の鳥の声。Jimがそれにパーカッションも加えて、あっという間に私のイメージしていた音が作り出してくれたのが、”Azul! Azul!”のイントロ。

 1日目はここまで。およそ時間通りで5曲を録音。「いやあ、楽しいレコーディングだったよ!」ってツーショット写真を撮影しようとみんなが言い出してくれて、それぞれに撮影。
 これに明日のパーカッション、そして明後日のストリングをオーバーダブしていくことになる。

 レコーディング2日目はまずはパーカッションのオーバーダブ。
 Kahlil Kwame Bellは190㎝はある巨体。でもやさしくて繊細な人。たくさんのパーカッション機材を持ってきてくれて、いろいろと音も試しながら録音。百々さんも初対面ということで、私がリズムについてリクエストしても、OKとすぐに受け入れてくれた。 
 その後はピアノトリオの4曲をレコーディング。これはそれぞれ2テイクほどで完了。さすがに早い。 
 最後にひとり残って、ピアノソロをレコーディング。テイクが重なるほど、気持ちが入っていき、どんどんとテンポが遅くなる。でもJimも百々さんも”Beautiful!” “Another Beautiful!”と気持ちよく演奏させてくれた。ちょっと気になった細かい部分のパンチインなども済ませ、今日は終了。

 レコーディング3日目は待望のストリングスの収録。ストリングスの共演は夢だった。
 百々さんに「指揮が必要だと思うから、よろしくお願いしますね」とお願いして、”Dear Friend”から。これはストリングスとピアノだけの曲なので、音のタイミングや音程にもかなりシビアになる。特にストリングスは本数が少なければ少ないほどシビアなものだ。

 姉のViolinとViolaを担当するPauline Kimが「これはすばらしい曲だしプロジェクトよ。本気出してレコーディングさせてね」3時間ずっと立ちっぱなしで演奏してくれた。姉の本気度を観てCelloのKristen Kimもすごい集中力。ピアノは2テイクほどだが、Paulineは自分のViolinにViolaもオーバーダブする作業がある。音に集中し空気が張り詰める。そしてレコーディングが終わり、感動の共演の後は心が重なった感覚がお互いに残った。
 その後の仕上げのピアノのオーバーダブをサラッと済ませて、さて、最後のミキシング。これには百々さんと私で、Jimの意見も聞きながら3時間ほどかかった。「ううん、この音がぶつかってる。ここからかなりテンポが走ってる」などと、気になる点を上げて、Jimも最大限の修正をしてくれた。

 この後は内藤克彦さんのマスタリングにディスクが渡ることになる。JImが「カツはマジカルだよ。どうやってるのかもわからない。すごい人だよ」ディスクをいただいて真夜中にスタジオを去った。
「みどり、楽しかったよ。明日から会えないのは寂しいね」「私もできたらここに住みたいくらい」と別れを惜しんだ。
 そして百々さん、ここまでありがとうございました。でもまだマスタリングもありますよ。


※当時のブログをご覧になれます。
https://blog.goo.ne.jp/midopi_2005/e/8bdf3fffb36e9c3da59b6771fc65a4d0

Park West Studio

Jim Clouse

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