エッセイ

神さまにはプランがある~続編-8

8.アルバムジャケットへのこだわり

今はダウンロードが主流になったが、それぞれの制作者にはアルバムジャケットやCD盤のデザイン、それにライナーノーツなどのこだわりがあるものだ。私もジャケットにはこだわりがあった。

NYに来て、仲本先生やマミさんのおかげでJAMSNETの関係者にお会いすることが多くなった。そんな中JAMSNETの親睦会が行われた、門外漢の私も仲本先生のお口添えで参加させていただくことになった。まだJAMSNETが創設されて2年。みんなが集まることもそれほど多くはないので、親睦にはいい機会だ。

仲本先生が「あれが小林利子さん。世界的な折り紙アーティストで折り紙セラピーをやってます。滅多にお会いできないので、ご紹介します。」ということで、利子さんに初めてお会いした。ニューヨーク州立病院ブロンクス精神医療センターでアートセラピーのお仕事をしているという。その初対面でいきなり、私の頭にひらめいたことがあった。
「あの、患者さんにアルバムのジャケットをデザインしていただきたいんですけど」利子さんは一瞬驚いていたが、「患者との問題はあるけど、わかりました。やってみましょう。」

小林利子さんはNHKの趣味の時間などで折り紙の講師をやっていたが、50代を過ぎてから、単身で米国に渡り、大学で勉強をし、セラピストの資格を取得し、この病院で働くようになったというガッツのある女性だ。


その後、利子さんとお会いし、ブロンクス精神医療センターに行くことになった。ここはニューヨークでももっとも深刻な病状の人たちが収容されるセンターでもある。行くと案内係に言われた。「患者と眼を合わせないでください。攻撃されると思って暴力を振るわれることがあります。またHIV患者が多いので、接触は避けてください」

まずは利子さんの提案でミュージックセラピーの一連として、クラスでピアノを弾くことになった。患者さんはさまざまな年齢と人種の方たち10数名。少し弾くと、何ともノリがいい。「君はハリウッドに行った方がいいよ!」こちらも楽しくなっていろいろと弾いた。
こんな素敵なオーディエンスは滅多にいないなぁ!

利子さんはその後、センターの患者さんから絵に才能のありそうな人をピックアップして、絵を見せてくれた。ふたりで相談して、黒人の少年Gregoryにお願いすることにした。
Gregoryは幼少期から家庭内暴力と想像を絶する虐待にあっていたらしい。でも初めてあった彼は優しくて透明感があり、人懐っこい少年だった。「しばらく時間をください。私が彼と少しずつ仕上げるから。曼荼羅の形になります」

その後も2度ほどブロンクス精神医療センターには、利子さんを訪ねに行った。ある時は部屋に入るなりハグしてくる女の子がいて、利子さんもびっくりしていた。帰りバス停で待っていると、患者さんらしい若い男性から「お茶に行きませんか」とナンパされる。そんな具合だった。どうも私はこういうところに相性がいいらしい。

帰国少し前、およそ2か月をかけてGregoryと利子さんは曼荼羅を書きあげてくれた。ほんの少しだけ彼へのお礼を支払った。彼にとっては初めての収入だった。その後彼は退院し、絵を本格的に始めて、コンテストなどでも授賞したという。

帰国後、アルバムデザインを友人の伝手で、あるデザイナーにお願いした。セイコーや資生堂のCMデザインなどしているメジャーばりばりの人だ。この曼荼羅自体をジャケットの表面には少し難しい。ということで、ジャケットの中折に挟み込むように別紙で曼荼羅を開いて見えるように仕立てた。そして曼荼羅の一部を帯状にデザインして表ジャケットとCD版のアクセントに使っている。

※当時のブログもご覧になれます。
https://blog.goo.ne.jp/midopi_2005/e/70a690dad0e3c21bce28702436370602

アルバムジャケット

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