エッセイ

神さまにはプランがある~続編-7

7. レコーディングでもっとも重要なのがエンジニアだ。

知り合った仲本先生の秘書のクミコさんの、洋裁の先生にキョウコ・ベイカーさんという方がいる。彼女の亡くなった旦那さまは、David Bakerさんと言って、プロデューサー、サウンドエンジニアとしてグラミー賞を2回授賞している。クミコさんと仲本先生にもご一緒いただいて、キョウコさんのお宅にお邪魔した。

オーディオルームで本物のグラミー賞を手にさせていただいた。これは亡くなる3か月前にマリア・シュナイダー・オーケストラの作品に対するグラミー賞だとのこと。

一方、キョウコさん自身も、服飾デザイナーのキャリアを確実なものにしている。アトランタ州から依頼を受け、「風と共に去る」の衣装を再現する仕事もしている。当時の資料もあまりないため、映画を一時停止しながら型紙を上げていったという。

そんな世間話はよかったのだけど、レコーディングの話になるとシビアな口調になった。「みんなニューヨークに来てレコーディングしたがるけど、結局お金をだまし取られて失意のどん底で日本に帰る人たちがほとんどなのよ。ニューヨークで箔を付けたいんでしょうけど、そんなに甘いものじゃないのよ」
クミコさんも仲本先生も一緒になって小さくなって聞いていてくれた。この小学生のように下をうつむいた状態は続いたので、先におふたりには帰っていただき、私だけ残ってお話を続けた。そして最後に「この本を読んでください。私の想いをここに書きました」と言って、帰った。その夜は眠れない夜になった。

翌日、キョウコさんから電話があった。「本を読みました。あなたの思いはわかりました。Davidの弟子で優秀なエンジニアがいるのでご紹介します」

キョウコさんとはその後も何度かお会いして、よい関係を築いた。日本にいらしたときにもわざわざ訪ねてきてくださった。昨年他界されたと聞き、この時のことを思い出した。

さて、紹介していただいた内藤さんには、NYでもっとも老舗のAvatar Studioに逢いに行くことになった。この中に個人スタジオを持つのは内藤さんくらいだ。当初、やはりレコーディング経験もない私には、多少の不信感を抱いていたのかと思う。詳細な企画書を作って見せた。内藤さんも百々さんの名前はよく知っていて、彼がついているなら安心だねということだった。その後は最高のサポートをしてくれた。
「NYにもスタジオが少なくなって市内で使えるのはここぐらいです。でも高いので、おすすめはニュージャージーでトニー・ベネットの息子が経営しているスタジオです。ここのピアノは調整もよくてお勧めです。さらに選ばれた新人には格安にしてくれる制度があります」

レコーディングにはその場でミックスするミキシングと、さらに音に磨きをかけるマスタリングという作業がある。そしてこのマスタリングという技術は神の領域だという。どれほど違うのかというと、実際、聴いてみるとそれがぜんぜん耳への入ってくる様子が違う。今回はこのマスタリングを内藤さんにお願いすることになったが、レコーディング日数と同じだけマスタリングにも時間をかけた。だから、いくら聴いても疲れない音だと自負している。

※当時のブログでもご覧になれます。
https://blog.goo.ne.jp/midopi_2005/m/200804

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