エッセイ

わかれ道は突然やってくる-7

7.初めての抗がん剤治療

7月5日、国立がんセンターでの入院が決まり、病室に入ると、すぐに担当医がやってきて、「面談室でお話できますか」と言う。


若い医師だが、いかにも優秀そうな、なおかつ闊達に話し出した。
私から口を開いた。「遺伝子変異がないから、治療も試行錯誤ですよね」
「そうですね。まずはもう一度、国立がんセンターでの肺生検を受けませんか?こちらにはさらに細かい遺伝子パネルがありますから、遺伝子の一致するものがまだある可能性があります。」
「そうですか。実は前回の肺生検がかなりキツかったんですが」
「こちらでは安心して受けていただけると思います」
サイトにもここでの肺生検は痛みがないという記述を読んでいたので、信じることにした。
「わかりました。それではもう一度生検を受けます」


「もしそれでも遺伝子変異が見つからない場合は、臨床試験と言うのがあるんですが、受けてみませんか?すでに多くの症例があるので、心配には及びません」
即、答えた。「はい、やりましょう」
医師もその即答にはびっくりしたようだが、30ページほどの資料の説明が始まった。
「ある程度勉強して来たので、少しはわかります」
「それは話しやすいですね。」とひとつひとつの項目について説明をしてくれた。
「医療の進歩に貢献できるなら、ぜひやりましょう。他にも何かご協力できることがあれば、なんでもおっしゃってください。」「それはありがとうございます」

その日は2度目の肺生検を受けることとなった。前回は脊髄側からだったが、今回は口からだった。麻酔が効くので、朦朧としたなかで痛みもなかった。

「生検が採れましたので、遺伝子解析をします。2週間ほどかかりますので、明日、一旦退院していただき、後日また入院をお願いします」

初めての抗がん剤治療は延びたが、少し希望が見えて来た。

帰宅し早速臨床試験について勉強を始めた。臨床試験は治験とは違い、すでに臨床現場で実績を踏むための試験となる。治験は薬の効果などプラセボと言って、偽薬を使って効果を比較していくことがあるが、臨床試験は実際の患者さんに協力してもらって、症例の確認をしていくことになる。

遺伝子解析にはかなりの時間がかかり、入院日は7月27日になった。
再入院すると、先日の担当医から説明が再度あった。
「遺伝子解析ではやはり臨床試験の方が良いだろうと言うことになりました」
「はい、やりましょう」
治療方針など説明をしてもらって、やっとこれで抗がん剤治療が始まると、安堵した。

翌日、化学療法プラス免疫チェックポイント阻害剤の点滴があった。9本の点滴を4時間ほどかけて投与した。
その間、痛くも痒みも嘔吐も副作用はなく、スムーズに点滴は終わった。

入院直後から始めたブログのリンクには、多くの方々からの励ましの反応があって、びっくりするほどだった。こんなにたくさんの人たちから応援をいただけるとは、思ってもみなかった。お一人お一人のコメントを受け止めて返したいと思った。

経過観察は9日間。退院前日には再検査があるが、それまでは点滴も何もなくゆっくりしているだけ。今後は3週間おきの通院での抗がん剤投与を続けることになる。

わかれ道と言いながら、私にはまた幸運が起きたようだ。
これからも私とがんとの共存は続く。どんなことが起きるかは予想できない。
でも、今はこの幸運に感謝し、そしてこれをきっかけに多くの方々の励ましに感謝し、今を生き続けたたいと思う。

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