エッセイ

礼儀がサービスです。

 ボーカル教室に通っていた、まだ20歳そこそこの頃、関係者に紹介してもらって、銀座のクラブで歌の仕事があるというので、何人かの生徒で面接に行きました。

 泰明小学校のすぐそばにあったそのクラブは、ママのほかに、店主のシャンソン歌手、銀巴里に出演しているピアニストがいました。
 事務所の人に連れられてドキドキしながらその店に入ると、お店の方が「着替えてください」と言います。訳も分からずみんなで更衣室に入ると、そこにはオーガンジーのワンピースが何着か用意されていて、それに着替えました。
 着替え終わったところで、お店の方が「マスターからお話しがあります」と言います。カウンターに並んで座ると、おもむろにヒゲのマスターが口を開きました。
「水商売は礼儀がサービスです」「椅子には浅く腰かけてください」「お客様がタバコを手に取ったら、マッチをこのように擦って差し出します」「ウイスキーの水割りはこのように作ります」・・・
 あれ????私たち歌いに来たんですけど・・・
 何人かはすぐに辞めたのですが、私はとにかく歌えればいいと思ったので、数か月そのお店でお世話になりました。

 すでに40年以上前ですが、そこではいいお給料とチップを毎日のようにいただきました。チップはいつも1万円札でした。お寿司をとってくれるのはいつも銀座「久兵衛」のお寿司でした。バブルのおかげです。

 店主のシャンソン歌手は美輪明宏さんにも習ったことがあるそうで、その様子をお話をしてくれました。レッスンに行くと、なかなか歌わせてもらえなかったそうです。「枯葉」を歌うのに、最初の週は「枯葉からイメージする絵を描きなさい」と言われたそうです。次の週に行くと「鏡の前で枯葉をイメージして歌う姿を作りなさい」と言われたそうです。それだけイメージを大切にされる方なんですね。

 次回は弾き語りについてお話ししますね。

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