エッセイ

初めてのピアノはやっぱり”ネコふんじゃった”でしょ。

ピアノ初体験者がまず通る道、それが”ネコふんじゃった”じゃないですかね?
物覚えつかないころから、これだけはなぜか楽しくて、いかに速弾きするかで熱中したものです。幼稚園のピアノでも弾かせてもらっていた記憶があります。

6歳から習い事をするといいという、どこに根拠があるかよくわからない言い伝えがありまして、私も6歳になったころに、ピアノを始めました。というか、母が珍しくお行儀よく私に聞いてくれたわけです。「お友達のナントカちゃんがピアノを習ってるけど、みどりもピアノやりたい?」・・・そんな風に下出に質問されたことがあまりなくて、少しうれしくなりながら、「ウン!」って答えたわけです。

歩いてすぐのピアノの先生のお家はレースのカーテンやらフワフワのスリッパやらあって、ウチとは違うセレブなお宅だった。先生はとってもやさしくて、2回くらいレッスンすると、花丸をつけてくれたから、行くのは嫌じゃなかった。

でもウチにはピアノはなくて足ふみオルガンだったので、練習に困った。足ふみオルガンは足を踏まないと音が出ないんだけど、小さい私には足が届かなくて、苦労した。そこで紙鍵盤を活用した。要するに鍵盤が書いてある長い紙ね。楽譜に書いてある1とか2とか書いてあるのは音程のことだと思っていた。でもなんだかそれだと音楽らしいものにならなくて、疑心暗鬼になった。のちのちその1とか2とかいうのは指番号というのらしく、音程との違いの理解までに少し時間がかかった。でもだんだんとわかってくると、音楽らしいものになってきたので、誇らしげに「川は流れる」のような簡単な曲を悦に入って弾いていた覚えがある。

そんな娘を見て、両親はピアノを買ってやろうと決心したらしい。ある日曜の朝、周り廊下のガラスを全部外して、客間にドンと黒光りする大きなピアノが運ばれた。おまけにトッポ・ジージョのフィギュアが付いてきて、それが特にお気に入りだった。
https://youtu.be/jPjgtNQgTv4
ピアノはびっくりするくらいいい音だったけど、まだレパートリーは少なくて、やっぱりペダルに足は届きにくかった。でもそれはぜんぜんオルガンとは違う代物だったから、ピアノの下で寝るくらい好きになった。

でもあまりいたずらが過ぎるので、しばらくはピアノにカギをかけられてしまった。ピアノを音楽の奏でるものとして認識できるまでには、かなりの年数がかかったかなぁ。

ピアノのレッスンはそのうちにつまらなくなって、寒いの暑いのって言い訳をしては練習をさぼっていた。でも15歳まで続いたかな。いやいややっていたけど、小さいころピアノを始めたから、今の私がある。

このピアノは結婚して離婚するまで、もっともお気に入りのピアノだった。仕事ではあらゆるピアノを弾いたけど、その中でももっともお気に入りだった。本当に弾きやすかったし、いい音がした。

離婚したあと、6畳一間のアパートには持ち込めず、「あのピアノ処分するぞ」って言われた時、とっても寂しかった。それがお別れだった。

ピアノはその人の歴史を知っているの。ちゃんと弾いてあげるといい音になる。見向きもされないと、少しずつ死んでいくの。だから、ピアノがお家にあったら、弾いてあげてね。愛でてあげてね。

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